線維筋痛症と整骨院

線維筋痛症に対する整骨院での施術はどのような効果があるのでしょうか。ネット上には、実際に線維筋痛症の方に対する施術について書かれたものが見受けられ、改善を報告する事例も散見されます。一方、厚生省やその他学会等のサイトでは、特段整骨院については療法の一環として言及されてはおらず、実際のところは分かりません。カイロプラクティックと線維筋痛症については厚労省による言及がありますが(下記参照)、研究自体が少なく効果は不明とのことです。このように、整骨院にせよカイロプラクティックにせよ、このタイプの療法に関しては線維筋痛症症状改善との関係はあまり明らかではないようです。

ほかの心身療法
線維筋痛症に対するカイロプラクティック療法と催眠術についての研究はほとんど行われていないため、これらの療法について結論は得られていません。(一部抜粋)

実状は別として、私はある時期から整骨院に通い始めました。きっかけは、線維筋痛症の症状で悪戦苦闘していた時期に別の疾患を発症したことにあります。この新たな疾患について調べてみると、私の症状には整骨院が合っているように思われ、足を運んでみることにしました。ただ、施術を受けることで線維筋痛症に悪影響がないかどうかについては多少なりとも懸念がありました。それでも、当時の私の体の状態は疾患の種類に関わらず日常生活への支障が大きく、少しでも可能性があるのであればやってみよう、もしかしたら線維筋痛症でこわばった体にも少しは効くかもしれない、そんな気持ちでした。

今振り返ってみると、現在の痛みのない生活への土台が着実にでき始めたのはこの頃からだったように思います。一番大きかったのは自身の体の状態に対する視点の変化です。それまで受けていたリンパマッサージでは、リンパや血流の滞りの問題について指摘をいただくことがほとんどでした。一方、整骨院では骨格や筋肉、体の歪みといった観点から色々指摘してくださいます。そのことで、自分の体の状態をまた別の視点から見られるようになりました。この整骨院通いをきっかけに、実は一番自分の体のことをわかっていないのは自分自身なのだと気づかされることになります。

それは来院初日のことです。施術にあたり、私の体全体の状態を把握するためのチェックが行われました。そこで初めて私の体は完全に歪んでいるということが判明しました。紙か何かで見せられた私の体はまるで抽象画のようでもあり、それは自分の実年齢の倍以上程の悪い状態でした。当然、自分ではそんな風に感じたことは一度もありません。そんな状態でどうやって日々の生活していたのかと、我が事ながらあまりの酷さに思わず笑ってしまいました。

この体の歪みに気づかされたことは大きな収穫でした。長年、異様な痛みやこわばりと日々格闘しながら無意識にそれを何とか庇うように生活してきたことが、いかに体に影響を及ぼしていたのかここで初めて認識させられたのです。その日を境に、疾患に関わらず、とにかく体の歪みを整えることに意識を向けるようになりました。もちろん、施術を受けるにあたっては、線維筋痛症からくる過剰な痛み等やその他の疾患も理解してもらう必要がありますので、そのことを告げた上で毎回状態に合わせて施術してもらいました。

1年半ぐらい通った頃、体の歪みも随分解消され、日常生活にも変化が現れました。そもそも真っすぐ立てていなかったのが真っすぐ立てるようになったことで、歩いたり物を取ったりなどの色々な動作で躓いたりふらついたりすることが随分減りました。家事や運動など日常の動作も、徐々にではありますが、以前よりスムーズに動ける感覚を覚え始めたのもこの頃からです。同時期に太極拳もやり始めました。色々なものを組み合わせた効果でもあったと思いますが、結果的に整骨院に通って体を整えたことで、日常の動作や運動がしやすくなり線維筋痛症の症状改善にも一役買ってくれました。

このことは、決して整骨院を勧めるものではありません。線維筋痛症の症状は個人差も大きいでしょうし、誰かに効くことが他の人にも当てはまるとは言えません。ただ、長期間に渡って日々消えない痛みやこわばりで、横になることが多かったり、あるいはそれらを庇うために無意識に不自然な動きをしていたりすると、どこかしら体の異常が現れても不思議ではないということです。私のように、自分ではそれに全く気づかないまま他の疾患を発症する可能性もあるかもしれませんし、不自然な姿勢を保ち続けることで、体に歪みが生じ他の箇所に異常が出ることもあるかもしれません。私自身、痛みやこわばりが圧倒的すぎて、他の感覚を見失わせる程にそれ以外のことは何も感じなくなっていたのだと思います。知らず知らずのうちに体は痛みに圧倒され、「気づく力」「感じる力」を失っていたのです。個人差はあっても、線維筋痛症の痛みやこわばりは尋常ではありません。そのため、そこに意識が向きすぎて、他の事に考えが及ばないのも至極当然なことだと思います。しかしながら、そうした思考の癖みたいなものによって、また別の問題が引き起こされることは十分あり得ます。強烈な痛みが続く時に、筋肉や骨格など体の状態に意識が向く人はあまりいないと思います。それでも、ほんの少し他の所にも意識を向けてみることは決して無駄なことではないと思います。私が整骨院で経験したように、自分の無意識に「気づき」を与えることが何かしら症状改善に役立ってくれることがあるかもしれません。

ただ、体に圧を加えると痛みが悪化するのではないか、全身症状が悪くなるのではないか、そんな不安は必ず生じると思います。私も実際そうでした。しかしながら、私は必ず痛みの程度を施術のつど報告し、圧の加減を調整してもらい、状態によっては行かないという選択もしました。そして、整骨院へ通った後は家に帰って必ずホットタオルで施術の部位を温めて痛みを和らげ、自分にとって続けられる方法を模索しながら通い続けました。線維筋痛症があるということは痛覚に異常があるということですから、その点は十分考慮してもらう必要があります。それを理解してもらえない場合や悪化する場合は即止めるなど注意すべきでしょう。もちろん、医師への相談は必須です。また、相性もあると思います。私は一度、線維筋痛症学会登録の整骨院に行ったのですが、施術の方との相性が良くなく逆に悪化しました。そこが悪いというのではなく、担当の方との相性があると思います。実際、そこで改善している方もいるそうですし、良い悪いの二項対立的判断ではなく、相性を見極めることも大事でしょう。振り返れば、このように何が改善方法の一助となるかは、偶然の産物的な部分もしばしばでした。新たな疾患を通して偶然発見するなど、どんなものでも決して無駄ではなく、むしろ自分の無意識に気づきが与えられ、線維筋痛症の症状改善に役立てることができました。病状によってはすべきでないこと・時はありますが、痛みに圧倒されて全てを無理と否定的に捉えるのではなく、必要であればいつでも受け入れる心の準備をしておくことも症状改善には大切だと思います。それが時に新たな光を与えてくれることがあります。

結局、当時の私は「病名」とその「症状」を多少知ったつもりでいても、その時々における「今の自分」については驚くほどに無意識・無頓着だったのだと気づかされます。もちろん病名や症状を知ることは最も重要なことです。それが一つの進むべき道を示してくれるのですから。しかしながら、自己改善の道のりにおいては、実はそれ以上に大事なことがあると思います。それは「病名」や「症状」ばかりに囚われすぎずに、その時々の「今の自分」を俯瞰的に捉えるよう努めることです。線維筋痛症は全身に色々な症状が現れます。そんな中で俯瞰的に自分を見るなど無理と思われることも当然だと思いますが、「症状」に意識が集中するばかりに「症状」にはない他の不具合が起こった時に、それを見逃す可能性も決してないとは言えません。そんな事態を避けるためにも、少し症状が緩和している時には自分の状態を俯瞰的に見るよう努めてみてはどうでしょうか。それがよりよい自己改善の道へと導いてくれるかもしれません。


◆参考
一般社団法人日本カイロプラクターズ協会「カイロプラクティックとは」
整体・整骨院とカイロプラクティックの違いについて
マッサージの正体(コラム)

この記事が役に立つと思ったらシェアしてください。