線維筋痛症とウォーキング

有酸素運動であるウォーキングは線維筋痛症に効果的なのでしょうか。私は、強烈な痛みが出始めてから運動の一つとしてウォーキングを取り入れました。これは今でも効果的な自己改善・自己管理の方法の一つだと感じています。症状が悪化して激痛に苛まれていた最初の頃は運動をする気分ではありませんでした。何もしなかったわけではありませんが、とにかく時間が許す限り横になっていたいというのが実際のところで、とにかく時間さえあれば横になることがとても多かったです。もちろんウォーキングをするなど考えもつきませんでした。とてもじゃないけれど痛みやこわばりで自分から率先してわざわざ外に出て歩きに行く気になど全くなれませんでした。

そんな状態にあっても、今の夫となるパートナーがスニーカーのプレゼント付きで散歩に行こうとさり気なく誘い出してくれました。一人では到底考えなかったことですが、彼のおかげで少しずつですが歩きに出るようになりました。大学卒業以来、長年、通勤や買い物の便利さを最優先にし、駅から徒歩5分圏内のところばかりを選んで住んできたので、歩くということからは遠ざかっていました。そう考えると、この時期は、大人になってからの人生では一番歩いた時期です。

そうは言っても、ばっちり恰好を決めて、さあウォーキングをしようと言われていたのであれば、そういう気分にはなれず、わざわざ歩きに出るようなことはなかったと思います。そうではなく、彼は買い物ついでにあそこまで歩いて行こうと言って徐々にですが自然に距離と時間を伸ばす形で誘ってくれたので、じゃあそれならと歩くようになりました。痛みで時間を見つけては横になるばかりの生活の中で、彼もそれでは良くないと思ったはずです。よく一緒に近所のスーパーから少し離れた店まで買い物がてら歩きに出ました。その結果、頻繁にではありませんが、最終的には少し体調の良い日には片道30~40分程の距離が歩けるようになりました

ただ、実際に歩くと言っても、当時の私はその体の状態からほとんどまともに歩けていたわけではありません。最初、彼は私のことを「忍者タートル(turtle:亀)」と呼ぶぐらい本当に歩くのが遅く、あまりの遅さにそのスピードに合わせて歩いていた彼のほうがそのせいで疲れていたそうです。歩くのが速い人が遅い人に合わせて歩くのは逆に疲れるそうです! あまりの遅さに傍から見れば、誰もウォーキング的なものをしているようには決して見えなかったのではないかと思います。それでも、当時の私にとっては十分な「ウォーキング」で、何となくおしゃべりしながら歩いていると、ひたすら痛みに耐えて横になってばかりいるより気分も晴れて、体の状態も少し和らぐ感じがして決して無駄ではありませんでした。

実際、痛いから、こわばりで動けないからとひたすら動くことを拒絶していると、体中の血流も悪くなります。もちろん筋肉も動かしませんので弱っていくばかりで、体も重く感じます。ウォーキングは有酸素運動ですから、それによって筋肉を動かすことで心拍数が増え血流が促進・改善されると酸素や栄養素がたくさん脳に運ばれ脳の動きが活性化します。私は脳に霧がかかったようなブレインフォグの状態もあったのですが、やはりそれなりの歩数を歩くとそういう感じが少し和らぐような気がしていました。また、動かないでいると血流だけでなくリンパの流れも当然悪くなります。リンパ系は、すべての免疫細胞を体内に移動させる免疫系の輸送ネットワークであり、免疫機能から老廃物を取り除く排出機能を担っていますが、このリンパの流れが悪くなれば体の中に老廃物を溜め込んでしまうことにもなり、他にも様々な問題が出てきます。痛みで動かないでいるとますます体の状態が悪くなる、でも痛みやこわばりで動けない、あるいは動かない。悪循環の繰り返しです。たとえきちんとしたウォーキングではなくとも、少しでも外に出て歩くという行為は、そんな悪循環を断ち切るのに少なからず一役買ってくれました。

どのタイプの有酸素運動が合うかは個人差があると思いますが、ウォーキングが健康に良いということはよく知られています。身体的のみならず精神にまで良い影響があるということですから、当時若干嫌々ながらにでも始めた歩くという行為は決して間違いではなかったと思います。ウォーキングによる体への良い影響は挙げれば色々ですが、下記の動画(自動翻訳付)では以下の5つが挙げられています。

  • 背骨を健康に保つこと。
  • メンタルヘルスを改善すること。
  • 心臓と肺の機能を体系的に改善すること。
  • 血糖値のコントロールと改善に役立つこと。
  • 免疫システムを改善すること。

この中で、私に一番当てはまっていたのは五番目の免疫システムの改善です。当時は、とにかくすぐ風邪を引く、感染症にかかるなど免疫力が全くもって弱く、線維筋痛症以外にも問題が多々ありました。歩き始めてしばらくの間は、足腰も少し強くなった気がしましたし、冬の最中に歩きに出ても風邪を引くようなことはありませんでした。線維筋痛症の症状で言えば、特に体のこわばりが少し和らぐ気がするという点が一番大きかったと思います。また、線維筋痛症が精神面に影響があることはよく知られています。ウォーキングが自身のメンタルヘルスの改善に役立つことも考えられます。ご自身の症状改善に何らか有用であると思われる場合は改善方法の一つとして検討する価値はあるかもしれません。

ただ、痛みやこわばりがある場合、歩くことによって再び痛みなどの症状が悪くなるのではという懸念がある方も多いのではないでしょうか。実際、ウォーキングをしてみたけれど悪くなって止めたという方もいらっしゃるかもしれません。私もそれは同様でした。何よりも歩いた後に異様な疲れがきたりするのは稀ではありませんでした。また、歩いている時はそこまでなくとも、家に帰って痛みやこわばりが悪くなることもありました。極端に悪くなったり疲れたりする場合は、その時点でウォーキングが自分に適した運動ではないと判断して別な方法に切り替えましたが、少しぐらいの悪化は自分で許容して、極力全く動かない状態を日々繰り返すということだけは避けていました。なぜなら、総体的に見ると、動かなれば動かない程、いよいよ状態は悪化の一歩を辿るだけということを体感していたからです。これについては運動と線維筋痛症の関係について説明した下記の動画があります。内容についての詳細ページが別途ありますので、興味のある方はそちらをご覧になってください。

Dr.Andrea Furlanが言うには、線維筋痛症の人の場合、健康な人と違って、運動の後必ず気分が良くなるということはなく、やはりより多くの痛みや疲れを感じるそうです。しかしながら、だからと言って身体的活動量を減らすことは、危険な道を辿る選択をしているようなもので、それは悪化の道だとおっしゃっています。運動後の少しの痛みは運動プログラムの一部だと考える必要があるそうです。私の場合は、色々自己流でやってきた偶然の結果として経験上そう思うとしか言えませんが、やはり動かないという選択は線維筋痛症の人にとって医学的見地に立っても良い結果はもたらさないようです。辛くとも身体的活動は症状改善には避けて通れない道なのでしょう。私自身の10年以上に渡る経験からも、本当に動かないでいればいるほど症状が悪化する、そう実感しています。

いずれにせよ、私は自己流で自己改善を図ってきたので何でもかんでもそう順調に行ったわけではありません。確かに歩くことが自己改善に一役買ってくれたのは事実ですが、長い自己改善の道のりの中では歩いたからといって症状がどんどん軽くなり快方に向かうということはなく、紆余曲折を辿りました。そんな中では、どうしても症状が強く歩けない時はいくらでもありました。そういう時は無理せず、動かない選択をします。そして、ホットタオルなどのリラクゼーションのタイプの改善方法を行いました。ホットタオルについては別記事にありますが、あまりに症状が酷い時に無理やりウォーキングをする必要はないと思います。そうした運動的なものより、むしろその時点では徹底的にリラクゼーションを選択するというのも一つの手だと思います。私の場合、痛みやこわばりが極端に強くなった時はとにかく横になってホットタオルで痛みやこわばりの箇所をじっくりと温めました。これをひたすらやって少し血流が改善し、少し筋肉が和らぎ動けるような感覚が出てきた時点で体を少しでもいいので動かし始めるというやり方です。もちろん、そこでまた無理して色々運動をし始めるというわけではなく、動けるタイミングがあればできるだけ動くだけです。それが家事であれ何であれ小さなことでもいいのでやって、ひたすら1日中じっと横になって延々と動かずにいるということは極力避けました。

最近でも痛みやこわばりが出そうだな、あるいは少し感じるなという時はあえて短時間でも歩きに出ます。以前は歩いたから次の日体調が良いということはありませでしたが、症状が随分改善された頃になると、歩くと次の日は症状が随分軽減するということも多くなっていきました。継続は力なり、でしょうか。今回やってもダメだったからもうしないという考えより、今回はダメだったけど体の調子を見てまたやってみようぐらいの気持ちで不定期にでも続けることが大事だと思います。簡単ではありませんが、線維筋痛症の症状改善には粘り強さや忍耐、諦めない気持ちが必要なのかもしれません。

こうしてみると、程度の差こそあれ日常的痛みがあった頃はとにかく日々の対処に必死で何も深く考えられませんでしたが、今になって思うことは、線維筋痛症の症状改善のためには、日々の生活に改善のための取り組みを段階を追って上手に取り入れていくことが大事だということです。私は医療的サポートはなく、ほぼ完全自己流でしたので、症状に合わせて段階を踏むという知識が皆無でしたが、自分の体の状態を見て、これは今日はできる・できない、あるいはやったほうがいい・やらないほうがいいと判断しながら時間をかけてここまで辿り着きました。とは言え、今の私に残された課題もあります。元々柔軟性はあったのでそこは今ではほぼクリアしていますが、筋力強化は痛みとこわばりの悪化で何度も挫折してきた運動です。それでも遅すぎるということはないはずですから、今の課題として考えています。

運動が効果的といっても、気持ち的には痛みやこわばりがある時はどうしても色々やることが億劫で、何もやりたくないというのが正直なところだと思います。それでも、ほんの少しでいいので自分の背中を優しく押してあげて日常生活の一部として何かをやってみてはどうでしょうか。調子がひどく悪い時は敢えて無理をせず、自分に負担のない範囲でする。あるいは、敢えて一時的に何もしないのも一つの選択肢でしょう。そして、少し心身を休めてまた立ち上がる。そんな繰り返しで良いのだと思います。そして、どんな時も少しでも何かをやった時は心の中で自分を褒めてあげる、あるいは好きなお茶を入れて5分でも10分でもいいので好きな音楽とともにゆったりとした時を過ごし自分を大切なものとして扱う。たとえどんなに時間がかかったとしても、そんな日々の小さな繰り返しによって自分の後ろに道が作られます。そして、同時にそれが明日あるいは先々に来る痛みのない生活へと導く道を作ってくれるのではいかと思います。いつ消えるとも分からない痛みの中においても、道を作ることはできます。いつの時も道というものは他のどこでもない自分の中にあるものです。

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