線維筋痛症について知る-線維筋痛症とは-

線維筋痛症とはどのような病気なのでしょうか。リウマチ情報センターは線維筋痛症について以下のように記しています。

 線維筋痛症はどんな病気?    <概念> 
 「線維筋痛症」とは、3ヶ月以上の長期にわたって、身体のあちこちの広い範囲に痛みが持続したり、再発したりします。痛み以外に、身体の強いこわばりとともに、激しい疲労感、不眠、頭痛やうつ気分、物忘れなど多彩な症状を伴います。病気の原因はまだよくわかっていませんが、最近では神経炎症と免疫系からの検討が行われていますが、確定的ではありません。通常、さまざまな検査を行っても、患者さんに共通した特徴的な異常がみられないことから、わが国では線維筋痛症の診断が遅れることがしばしばです。この病気は、命にかかわる病気ではありませんが、現在のところ線維筋痛症を完治させる治療法がなかなかないため、日常生活への影響が大きく、しばしば社会生活が著しく困難なることが大きな問題となっています。
出典:公益財団法人日本リウマチ財団リウマチ情報センター

日本の現状について私が最も興味深く思ったことは、日本の人口における有病率が関節リウマチが0.7%(最大でも1.0%)であるのに対して、線維筋痛症は1.7%であるということです(2023年厚生労働省研究班の調査)。線維筋痛症はリウマチの倍以上あるいは倍近いの有病率ということになります。この数字とは裏腹に、私自身リウマチはよく耳にしていた一方で、発症当時、私は線維筋痛症という言葉を一度も耳にしたことがありませんでした。最近では有名人が線維筋痛症に罹患していることを公表するなどしてその名が知られるようになってきたようですが、実際、私自身も自分がなるまで一度も聞いたことがない病名でした。日常においても線維筋痛症が会話の話題にのぼることも一度もなく、最初自分の身に降りかかった時でも「何それ?」ぐらいに思った程度です。本当に何も知らなかったおかげか、逆にそれ自体にネガティブな感情を持つこともありませんでした。しかしながら、結局はその後、私は線維筋痛症について何も多くを知ることがないままに下記の症状の8割程を経験することになります。

結局、体に激痛が出始めた当初からその後数年の間、私は線維筋痛症とはどういうものか正直あまり理解しておらず、今思えば、何となく理解したつもりだけだったのだと思います。自分のことなのにと思われるかもしれませんが、正直、激痛に続く様々な症状で、積極的に自分で色々調べて理解する程の余裕はほとんどありませんでした。それでも、少しでも症状を改善したくて、その時々に応じて何とか自分ができる範囲で何ができるのか調べて実践してきました。

私が症状改善の道のりにおいて参考にしたリソースは多々ありますが、その中の一つに私の病気に対する理解を促してくれた動画があります。カナダはトロントから、疼痛専門医Dr. Andrea Furlanの「What is Fibromyalgia?」(「線維筋痛症とは何か?」)です。

この動画の内容は概ね次のようなものです。

「線維筋痛症は、一般人口の5%に影響を及ぼし、体全体に広がる痛みを特徴とする状態ですが、線維筋痛症についてはよく理解されておらず、医学部でも教えられていません。しかし、脳機能イメージングの発明のおかげで、過去20年の間により理解されるようになってきました。線維筋痛症は、広範囲にわたる痛みだけでなく、そのような痛みを引き起こす可能性のある他のすべての状態を除外することでもあります。それは、それを知っている医者によって診断されるべきですが、多くの医者は知りません。線維筋痛症の診断に関する最近の報告によれば、それはyes/noの状態、線維筋痛症の有無ではなく、むしろ症状や兆候の範囲ということです。線維筋痛症は、痛みのシステムの疾患です。 痛みのシステムは、誤作動する可能性がある家の警報システムに似ています。 同じことが私たちの体の痛みのシステムでも起こる可能性があります。 私たちはその痛みのシステムを修正する必要があります。 それが機能不全を起こしている場所だからです。線維筋痛症に対する治療法はありませんが、多くの方法で症状を管理し、高い質の生活を送ることができます。 線維筋痛症の人は、見えない障害を抱えており、治療では、専門家間の学際的なチームを活用したリハビリでアプローチをする必要があります。そのリハビリでのアプローチは、患者の全体を見て、その人に普通の人生をもたらし、人生を楽しんでもらうことです。 患者に対する教育も治療の一部であり、患者に自己管理のための戦略を教えることも含まれます。薬物療法もありますが、それを唯一のものとするのは健全ではなく、運動や心身療法などその他の療法も含める必要があります。痛みの管理のためには、薬剤を唯一の方法とするのではなく、患者自身が管理のための道具箱にいくつもの選択肢を持っていることが必要です。」

これを見ると、 線維筋痛症の診断は消去法的なアプローチが取られており、その抜本的治療法はないものの、 多くの方法で症状を管理し、高い質の生活を送ることも可能であることがわかります。そして、私自身最も印象深かったのが、動画の最後に述べられていることです。「痛みを管理するためには、自分の道具箱の中に多くの道具を入れておく必要があります。もしあなたの持っている唯一の道具が薬剤であるなら、それは良い道具箱ではありません。自分の道具箱には他の多くの選択肢を持っている必要があります。」。私はこれを聞いた時、自分の置かれた状況や日本の線維筋痛症に対する医療体制がどんなであれ、今まで自分は「道具箱」の中の選択肢を増やしてきたのだと救われた気持ちになりました。実際、これを視聴した頃には自分で多くのことに挑戦し失敗も繰り返してきた後だったので、妙に納得したのを覚えています。私の場合、症状が出た時の唯一絶対の方法は今でもありません。痛みを含む様々な症状がかなり改善された今でも、症状が出た時は幾つかの方法を組み合わせて状態に応じて管理しています。私は薬剤過敏の問題もあり、薬剤には頼れないという根本的な問題がありましたが、自分の「道具箱」からいくつかの方法を選んで試すという繰り返しの中で常に自己管理の方法を見つけています。今思えば、本当にどうやって痛みに耐え忍んで生きていたのかと思うぐらい大変な10年以上の歳月でしたが、それらの道具全てが何一つとして無駄にはなっていません。何より、この十数年の間における技術の発達により、こうして色々な専門家の意見や考えに触れる機会があることに、そしてそれを通して自分の症状がどういう状態にあるのかを少しでも判断できる材料がある最近の状況に感謝しています。

今は昔と違い、ネットなどを通して日常的に色々な専門家の意見や考えに触れる機会があります。専門家ではない自分が全てを理解することは困難ですが、それでも自分の症状とその改善方法を見つけるヒントを与えてくれます。僅かな時間でも痛みやその他の症状が軽減される時間があるのであれば、それを「道具箱」の中身を増やす自己教育の時間に充てるのも線維筋痛症と付き合い続ける人生においては重要ではないかと思います。そのためには、何を情報源とするのであれ、まずは自分で積極的にこの病気がどんなものなのかを知ることから始めてみてはどうでしょうか。そして、ファーレン博士の言及する「治療における専門家間の学際的チームを活用したリハビリでのアプローチ」が、今後の日本の線維筋痛症の医療体制にも現れることを期待します。


【参考文献】
トップページ│公益財団法人日本リウマチ財団 リウマチ情報センター 一般・患者様向け情報 (rheuma-net.or.jp)