線維筋痛症とヨガ

線維筋痛症の人に推奨されている運動はいくつかありますが注1)、最初の頃からよくやっていた運動の一つがヨガです。ヨガは、途中自分の体調と合わずに止めた時期もありますが、もうかれこれ10年以上何となく続けています。これまで色々な方の色々なタイプをやってみましたが、今現在は朝起きて太陽礼拝(Sun Saltation)をするのが日課です。

私の場合、運動と言っても他の疾患のこともあり、当時はあまり負荷のかからない日常的に続けられるものを探して何かしら日々コツコツしていました。ただし、やると言っても別記事に書いていますが、気功を除いては特別に教室に行ったり、ジムに行ったりしたわけではありません。正確に言えば、行かなかったというより痛みやこわばり、他の症状も鑑みると、とても他の人たちに交じって運動をしたり、わざわざ仕事終わりや休日に通えるような体の状態では全くなかったというのが実際のところです。ですので、自分のやれる日・時間に、やれそうなタイプのものを動画で見つけて大体5分から長くて15分程度するぐらいでした。

当時のみならず今でもそう感じるのですが、色々やってみた中でもヨガは自分の症状改善や自己管理をする上でよく合っている運動の一つだと感じています。他にもウォーキングと気功もそう感じるのですが、それらについては別記事で書くこととして、ヨガの良い所は、私の苦手な深い呼吸を意識的にできる点、そして何よりもゆったりとした動きで体を動かせるという点です。もちろんヨガでも動画で見る動きの感じは色々で、(私にとっては)速いものや激しいものもあります。それでも、初心者向けを選ぶと比較的ゆったりとした動きで無理のない動きが多く、動画の中からも非常に見つけやすかったのを覚えています。いずれにしても、個人差があると思いますので、運動を選ぶ際には自分の症状の状態に合わせて注意深く選ぶ必要があると思います。さらに言えば、症状も一進一退、日々異なることも少なくないのではないでしょうか。私は結構そういうことが多かったです。その点、下記に示すように、繊維筋痛症の人の場合は自分に合うように運動も調整する必要があるそうですので、専門的知識に基づき適切な指導ができる方のもとで自分に合った運動をするのが一番ですし、そうでない場合でも自分で体の状態に十分な注意を払って無理のない範囲でする必要があります。

瞑想的な運動の実践(太極拳、気功、ヨガ)
・中国発祥の太極拳と気功、インド発祥のヨガは、いずれも身体のポーズや動き、呼吸への集中、瞑想やリラクゼーションを組み合わせたものです。これら3つの施術・療法には共通して多くの特徴があるため、瞑想的な運動活動としてグループ化されることもあります。

・運動は線維筋痛症の人にとって有益であり、瞑想的な運動活動は身体活動を伴うため有用である可能性があります。また、これらの施術・療法の瞑想的な要素も役立つ可能性があります。線維筋痛症の症状に対する太極拳、気功、ヨガの個別研究では、有望な結果が得られています。しかし、その効果について明確な結論を出すには、これらの療法について十分な質の高いエビデンスがありません。

・瞑想的な運動活動は、資格を持ったインストラクターの指導の下で行う場合、一般的に安全性に優れています。ヨガ、太極拳、気功の研究では、副作用はほとんど報告されていなません。しかし、これらの施術・療法は、線維筋痛症の人に適したものにするために改変する必要があるかもしれません。(下線筆者)

Source :
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c05/17.html

経験上思うことですが、症状改善においては、どのような症状・段階でどのようなタイプの運動をするのか、どの程度の運動をどのように行うのか、それを適切に見つけられるか否かが重要な鍵となるのではないかと思います。私の場合、これまでずっと自分で判断するしかなかったので、その時々で色々やってみてはこれはダメあれはダメ、これなら何とか大丈夫という感じで手当たり次第というところがありました。しかしながら、体の状態に上手く合わない時はやはり一時的にでも症状が悪くなることがありました。もちろん、そういう時はすぐ止めるのですが、それでもそういう事態が避けられ、かつ常に体の状態に合わせた運動を選択できるのであれば、症状改善ももっと速かったのではないかと今は強く思います。もちろんそのためには、運動療法の専門家がいてくれることが一番です。当時の私のように素人考えで色々やっていては症状改善への道のりもかなりの遠回りになる可能性がありますし、最悪の場合にはどんどん悪化させてしまう可能性さえあるかもしれません。運動をすれば良いじゃないか、そんな風に簡単に言ってのける人もあなたの周りにいるかもしれません。しかしながら、私のこれまでの症状改善への道のりを振り返ってみると、症状改善はそんな〇〇をすればいいといった簡単な言葉で片付けられるものではないとはっきりわかります。欧米とは異なり日本には線維筋痛症に特化した非薬物療法指導者がいないそうで、運動療法をどこででも実施することは困難だそうです(下記参照)。私がそうであったように、そういう環境にない人は自分で無理のない範囲でやってみて、その時々に合った運動を見つけてやっていくしかありません。今後、日本でも症状の段階に合わせた適切な指導と助言ができる専門家が多く現れ、かつ早い段階から症状をコントロールできる環境が整うことがより必要となると思われます。

非薬物療法には、運動療法と精神・心理療法があります。欧米では積極的に行われていますが、わが国では医療制度の違い、これら線維筋痛症に特化した非薬物療法指導者がいないことから、どこででも実施することは困難です。…

Source :
https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm120/fm.html

ここで、いくつか私がよくやっているヨガの動画も一緒に紹介したいと思います。私が一番よく使ってきたのは「Tara Stiles」です。特にgentle yoga とgentle yoga routine with Tara Stilesは長い間どちらかを必ず毎日やっていました。上述したように、運動には個人差がありますので、これが良いということではなく、そういうのをしたんだぐらいに思っていただければと思います。彼女の動画の中でも難易度が高いものは私の体には合わないこともあってしませんが、色々な方のヨガをやってみて、毎日少しでも無理なくでき、かつ自分の体が心地よいと感じるのが彼女のヨガでしたので、今も体調に合わせてやっています。

もう一つ、ここ数年ですが毎日のようにやっているのが太陽礼拝です。太陽礼拝を始めたのは本当に最近1~2年のことで、症状改善が随分進んだ頃に偶然見つけました。これを知ったきっかけが何だったのかはもう覚えていませんが、ある時偶然見つけてやってみたら体の調子が良かったのでやっています。太陽礼拝といっても色々な方の数多くの動画があります。良さそうと思うものを色々やってみましたが、私が一番心地良いと感じるペースと雰囲気が、このanri yogaさんの太陽礼拝です。自分のペースに合っているだけでなく、音や声も心地よいので続けています。私の場合、画面の光加減、音、声のトーン、流れる音楽等にもかなり過敏なこともあり、動きという観点からだけでは選んでいません。繊維筋痛症の方の場合、多かれ少なかれ症状の一つとして何らかの過敏症をお持ちの方は少なからずいらっしゃるかと思います。自分に合うものを選ぶ際には、そうした点にも注意を払い体がどう感じるかに耳を傾けることも大事かと思います。

まだ症状が強かった頃は、いつも全身を動かすようなものばかりを見つけようとしていました。しかし、今は、ここが少し調子悪いかもと感じる体の特定の部位に焦点を当てて動画を探すこともよくあります。色々な方の良い動画がありますが、特定の部位・状態に焦点を当てて行うヨガの中でごく最近見つけたものではB-lifeというチャンネルのMarikoさんがお気に入りです。このB-lieの中からその日や最近の自分の調子に合わせて選んでいます。ここで一つ紹介しているのは、腸活というものです。少し以前にマッサージを受けた際に腸に硬い部分があると言われたので、何となく腸に着目して探してみたものです。効果の程は別として、体が心地よいと感じるので定期的にやっています。正直、全身症状が酷かった頃にはあれこれ考える余裕は全くなく、とにかく体を動かしてみようぐらいで体の部位に注意を払うなど全くできませんでした。症状が徐々に落ち着いて、より自分の体の隅々にまで耳を傾けらるようになったことも症状改善への道に一役買ってくれたのかもしれません。

これまで色々な運動をやってきて、正直、この運動をすれば良いとか、誰の何が正しいというのはない気がします。同じ病でも症状も本来持っている体質も全て一人一人違います。この人はこれで改善したけれど、こちらの人には全然効果がなかった。そんなことも当たり前なのかもしれません。ですから、まず専門家不在で自分でする場合は、とにかく無理のない範囲で色々探してやってみて、体が何となくでも良いと感じたらしばらくやってみるというのはどうでしょうか。それでダメなら他のを探してみる、そんなことを繰り返しているうちに、自ずとこれだと思えるものが見つかるのではないかと思います。また、以前やったらダメだったのに、今の状態には合っている、そんなこともあると思います。私が実際そうでした。今ダメだから永遠にダメだと決めつけないで、気楽に構えて色々やってみてはどうでしょか。途中くじけそうになることも嫌になることも必ずあるはずです。だからこそ、症状改善に気負いは禁物です。すぐ改善しなくとも、慌てて結果を先急いでは決して良い結果は出ないと思います。

運動の際に何より大事なことは、やらなければならないという気持ちで自分を縛らないことではないかと思います。なければならないという気持ちそれだけで十分ストレスになります。ただでさえ痛みやあらゆる症状で心身共に疲弊しているのに、どんなに症状改善のための運動をやっても、なければならないという気持ちで自分を追い込んではむしろ逆効果ではないかと思います。いいな、ちょっとやってみようかな、今日はこのぐらいでいいや、そんな気楽な気持ちも日々の症状の改善には大切だと思います。気負いすぎない。病気の種類や有無に関わらず、そういう気持ちが大事なのだと最近はよく思います。何をやっても上手くいかない時、体調の悪い時、症状が悪化した時、そういう日は病気の有無に関わらず誰にでもあるはずです。だからこそ、それをダメだと決めつけて自分を責めたり落ち込んだりするのではなく、そういう日もあるさと気楽に構えて、じゃあどれならできるかと考える、あるいは何もしない選択をする、どちらも長く病と共存し続ける人生では大事なことだと思います。自己改善をする中で、できない自分、やらなかった自分を責める必要は全くありません。毎日気負ったからといって治るわけではないですし、何より「なければならない」という「すぎる」義務的感情は、どんなであれ心身に負荷を与えてしまいます。私は、なければならないと思っていたわけではありませんが、何でもやり始めると勢いあまって過ぎる傾向にあるものですから、決して賢い方法だったとは言えません。確かに、ある場面ではそれが結果や成果をもたらすという利点もある一方で、心身には決して良いことではなく、気づかないうちに過度の負担を与えていたのではないかと思います。運動であれ何であれ、どんな状態の時でも自分なりのちょうどいいを心がけてやること、それが一番だと今は考えています。


【注】
1)厚生労働省eJIM | 線維筋痛症 | 各種疾患 | 医療関係者の方へ | 「統合医療」情報発信サイト (ncgg.go.jp)

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