線維筋痛症に対するマグネシウムの補給は有効なのでしょうか。研究の中には、線維筋痛症患者における細胞内マグネシウム濃度が減少と、その濃度と線維筋痛症に関係を指摘する報告があり、実際マグネシウムサプリメントは線維筋痛症患者の間で広く使用されているようです。一方で、線維筋痛症・慢性疲労症候群の患者の多く(35%~68%)が栄養補助食品を利用しているものの、ビタミンやミネラルの欠乏が患者の症状に関与しているかどうかは不明であり、これらの患者のサプリメント使用が有効であるという証拠は不十分であるとの報告もありますし1)、臨床におけるマグネシウム使用の利点への確信を得るという点では、まだより多くの研究が必要との指摘もあります2)。ただ、線維筋痛症患者のマグネシウム欠乏の有無ははっきりしないものの、潜在的なマグネシウム欠乏症の割合は高く、その症状は似ていることから線維筋痛症の症状の悪化を防ぐためマグネシウム欠乏症がある場合には相応の治療をすべきとの見方もあります3)。
-マグネシウムとは-
マグネシウムは、エネルギーを産生・貯蔵・利用する働きがあり、ミトコンドリアには欠かせない重要なミネラルの一つです。
特に、脳・心臓・筋肉に重要なミネラルで、不足すると偏頭痛、心筋梗塞、高血圧、慢性筋肉痛などにつながりやすい栄養素であることが分かっています。※
※研究データ:「人間のマグネシウム、健康と病気への影響」
出典:マグネシウムとは – マグネシウムデータベース (magnesium-database.jp)
私自身にマグネシウム欠乏症があるかどうかはわかりませんでしたが、線維筋痛症の症状であるこわばりや慢性的筋肉痛、さらには体の特定の部位の筋肉がぴくぴく痙攣を起こすのもしばしばでした。そんなある日知ったのがエプソムソルトの存在です。エプソムソルトの原料は、海由来の「硫酸マグネシウム」で、入浴時の使用によってマグネシウムを経皮吸収するというものです。マグネシウムには筋肉を弛緩させる働きがありますが、特に、こむら返りや筋肉の痙攣、慢性筋肉痛には、このマグネシウムを経皮吸収することで短時間で狙った場所の症状を解消できるエプソムソルトが即効性があって効果的だとも言われています。
実際、線維筋痛症患者に対する経皮マグネシウムが有益であるとの報告もあります4)5)。ただし、その一方で、マグネシウム欠乏症などの治療に対するマグネシウムの経口治療・予防的補給の有効性は数多くの研究で証明されているものの、経皮吸収のほうについては科学的証明が未だ不十分であり、ネットなどでは経口投与より経皮吸収が優れていてより効果的との情報が溢れていることを憂慮する報告もあります6)。こうしてみると、実際のところは、線維筋痛症に対するマグネシウムの経皮吸収による効果を科学的に断言し臨床にて推奨する段階にはないのかもしれないと思われます。
さて、そうした研究の実際はさておき、痛みやこわばりなど様々な症状を抱え、改善に色々な方策を模索していた私は、その効果にかなり懐疑的ではあったものの、何はともあれエプソムソルトを試すことにしました。とりあえずエプソムソルトを購入しお風呂に入れて使ってみました。正直、そのエプソムソルト風呂に入った時のことは今でも忘れられません。体中にあった緊張感とでも言うのでしょうか、そんなネガティブな体の感覚がスーッと抜けていくような感覚でした。「これは何⁉」と一人心の中で思ったのを覚えています。それから数日間使い続けていると、さらにその効果に納得しました。それまでに蓄積された体の緊張感が徐々に和らぐような感覚が続いたのです。もちろん10年近く体の痛みを無意識に庇うように生きていたので、そう簡単に万事解決というわけにはいかないのですが、それでもエプソムソルトの助けを借りて慢性的な体の緊張・こわばりが随分緩和される感覚を覚えたのは確かです。
-エプソムソルトとはー
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同時に、この時期は食生活も見直しました。この頃、偶然見つけた動画で、マグネシウムとカルシウムのバランスについて知り、乳製品やカフェインを止めました。それまでの私の食生活はと言えば、元々のアレルギー体質もあり、外食やコンビニ食、お惣菜、冷凍食品などは全くなく、必要な材料だけ揃えて毎日完全自炊でした。それでも、ミルクを入れた紅茶やコーヒーは常飲しており、チーズなどもそれなりに食べていましたので、とりあえず、それら全て一旦止めてみることにしました。
私は専門家でも何でもありませんので、研究論文であれ専門家であれ、自分にとって何が本当に正しいかを追及する包括的知識も方策もありません。それでも、可能性があるならそれに賭けてみることには価値があると考えていました。先ほど紹介したような研究を見ても、線維筋痛症に対するマグネシウム云々をどこまで関心事とするのか、それが症状改善とどう関係あるのか懐疑的になることはいくらでもできます。それでも、今目の前にある自分の症状と向き合い、やってみる価値があるならばと、エプソムソルトだけでなく動画を参考にマグネシウムとカルシウムのバランスという観点から一旦乳製品・カフェイン抜きを試してみることにしました。
幸い、これらを総合的に続けていくうちに体もより動かせるようになり、痛みが続く時間やこわばり、程度などについても随分改善が見られました。この時期は気功や食生活の見直し、それに加えてエプソムソルトを使ったりと結構色々なことにチャレンジした時期でもあります。これこそが絶対的効果があったという単一的かつ絶対的理由は正直ありません。もちろん、この症状の時にはこれが一番よく効くというものはありますが、複合的な組み合わせでより多くの効果と改善が格段に進んだのだと思います。正直今思えば、この時期は大変でした。色々問題だらけの体で、これだけのことを考えて実行するのは決して楽でも容易でもなく、試行錯誤の四苦八苦といった日々でした。それでも、改善が見られるとやはり嬉しいもので何だかんだと毎日楽しくやっていたのを覚えています。
こうしてみると、巷には色々な情報が溢れているなあとつくづく思います。学術論文系からネットに溢れる情報まで、その量は相当なものです。何を自分の症状改善の方法とするかにしても、あまりに多くの情報がありすぎて何が正しいのかさえ分かりません。それでも、私は自分でできる範囲で、そしてやってみようと思えるものがあればチャレンジしてきました。専門家ではありませんから、研究論文を読んでも包括的理解はできませんし、知識なくして動画全てを単純に信じることも危険です。そんな思いを抱えながらも、ある程度の妥当性があって自分の直感というアンテナにひっかかればやってみました。日常的痛みのない生活に辿り着くまで随分遠回りをしたのかもしれませんが、今の自分で経験してきた改善方法の数を考えると、決して無駄なことは何一つなく、どれも大切な私の「道具箱」の中身で今も役に立っています。いずれにしても、エプソムソルトは万能薬という類のものではなく、あくまで補助的なものと私は捉えています。
【参考文献】
1) Joustra, M. L., Minovic, I., Janssens, K. A., Bakker, S. J., & Rosmalen, J. G. (2017). Vitamin and mineral status in chronic fatigue syndrome and fibromyalgia syndrome: A systematic review and meta-analysis. PloS one, 12(4), e0176631.
2) Boulis, M., Boulis, M., & Clauw, D. (2021). Magnesium and fibromyalgia: a literature review. Journal of primary care & community health, 12, 21501327211038433.
3) Raum, S., Timmer, W., Ott, A., & Weiss, T. (2023). Magnesium status and its correlation with symptomatology in patients with fibromyalgia syndrome: A cross-sectional study. Trace Elements and Electrolytes, 40(4), 158.
4) Engen, D. J., McAllister, S. J., Whipple, M. O., Cha, S. S., Dion, L. J., Vincent, A., … & Wahner-Roedler, D. L. (2015). Effects of transdermal magnesium chloride on quality of life for patients with fibromyalgia: a feasibility study. Journal of integrative medicine, 13(5), 306-313.
5) 線維筋痛症患者の生活の質に対する経皮的塩化マグネシウムの効果: 予備的研究|MAG21研究会
6) Gröber, U., Werner, T., Vormann, J., & Kisters, K. (2017). Myth or reality—transdermal magnesium?. Nutrients, 9(8), 813.
マグネシウムの重要性・働き・効果・効能・特徴 – マグネシウムデータベース (magnesium-database.jp)