線維筋痛症に対する補完療法に挙げられているものの一つにマインドフルネス瞑想があります。マインドフルネス瞑想は線維筋痛症患者に対するアプローチの一つとしても用いられ、MBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction:マインドフルネスストレス低減法)とも呼ばれます。
マインドフルネス瞑想とは、その瞬間瞬間での体験に完全に集中する瞑想の一種
出典:厚生労働省eJIM | 線維筋痛症[各種疾患 – 医療者]
ただ、この療法についてはまだ議論の余地があるようです。実際、限定的ながらその有用性に関する研究が報告されている一方で1)2)3)4)、その有望性が認められるものの推奨するにはエビデンスの質が十分ではないなど、その効果の不確実性についての指摘もあります5)6)7)。
「瞑想」とは、心と体の統合に焦点を当て、心を落ち着かせ、健康全般を増進させるために行われるさまざまな実践技法
出典:厚生労働省eJIM | 瞑想[各種施術・療法 – 医療者] (ncgg.go.jp)
マインドフルネスとは、「“今ここ”に意図的に意識を向け、価値判断をせず、ありのままに受け入れている状態」
出典:ストレス軽減、心を整える。マインドフルネス瞑想の効果とやり方 – eo健康 (eonet.jp)
さて、研究分野での議論は別として、私は症状改善の一環としてここ数年マインドフルネス瞑想を実践しています。ずっと以前の私はマインドフルネス瞑想という言葉自体は知らなかったのですが、気功を通して「静けさ」「(意識の)集中」の大切さを学んだことで、ふと瞑想をやってみたくなりました。当時はまだ、時折出現する痛みやその他の症状を改善するため奮闘していた時期でもあり、気功の最中でも集中力は十分とは言えませんでした。気功を学ぶにつれ、気功には環境の静けさだけでなく、心の「静けさ」と「集中」が必要だと感じたにも関わらず、いつもそこが上手くできず、もどかしく思っていました。それは長年に渡る日々の体の痛みやその他諸々の症状からくる心の落ち着かなさに起因していたように思います。実際、線維筋痛症の症状には集中力の低下も挙げられており、線維筋痛症患者にはよくあることなのかもしれません。それでも、何かしら改善の必要があると感じました。そこで私が実践したのが、座って呼吸に集中しながら無判断の状態を保つというものです。特に指導者から学んだわけではありませんが、とにかく動画を活用して毎朝晩続けました。
私は、他にもヨガニードラも体の状態に応じて行っています。ボディスキャン瞑想とも言われます。これは就寝前に行いますが、睡眠の質の向上には大変役に立ちました。全身がリラックスして実践中に寝落ちすることもありました。
【注意点】『ヨガニドラー』は寝てはいけない?
はじめのうちは眠くなり、最後起き上がれず寝てしまう人も少なくありません。その場合は無理せず眠ることでリラックスにつながります。
しかし、本来の「ヨガニドラー」では眠らず、「まどろみ」の状態でいることで「サンカルパ(大願)」の達成になると言われています。
目を覚まし続けるには、ガイドの音声に集中する、レッスン中だとインストラクターの声に意識を向けることです。
ヨガニドラーとは|やり方と効果、寝てはいけない理由 – SOELU(ソエル) Magazine
ただ、どのタイプであれ、私の場合は長期的に痛みやこわばりに効果があったわけではなく、短期的あるいは一時的に睡眠の質が改善したり、症状がある時でも心に落ち着きがでたり等の副次的効果でした。それでも、多数の症状があった私には十分な症状改善の方法の一つでした。私は、動画を使用して自分のペースで毎朝晩実践していただけですので、指導者の元でやるともっと効果が違うのかもしれません。私のお気に入り動画は言語が日本語ではありませんが、音にも過敏な私は、言語にこだわらず自分にとって耳心地が良い「音」のものを選ぶようにしています。
自己流でも一つ大切にしていたことは、心ないしは意識を「遊ばせる」ことです。気功を始めてから、長年に渡る痛みから体だけでなく心も「こわばっている」と感じました。心に余裕がないとでも言うのでしょうか。そんな「こわばった」心をもほぐせればと、瞑想中は何事にも無判断かつ浮かぶ思いや考えがあっても自由に遊ばせるような感覚でいました。何者にも囚われず川の流れに身を任せる感じです。簡単ではありませんでしたが、心の楔を取り払うことで体の緊張も心なしか解れ、その逆もしかりで緊張した体が解れると心も解放されるような感覚がありました。
漢方医学の特徴を表す言葉に「心身一如」という言葉があります。これは言い得て妙だと思います。瞑想で心が少し楽になると体も自ずと反応し、逆に体がほんの少しでも緊張から解き放たれると心にも何となく余裕が生まれます。私にとってマインドフルネス瞑想の最大の効果は、10年以上続いた心身の「こわばり」を少しでも解きほぐし、改めて「自分を感じる」感覚を取り戻させてくれたことです。「こわばった」心では本当の自分を感じることはできませんし、判断も冷静ではありません。痛み等の症状に心身が手一杯だったあの頃、もしこの鍛錬?に出会っていなかったら、せっかく長年蓄積した症状改善の「道具箱」の中から最善の策を選択することは今でもできていなかったかもしれません。
私の個人的経験では、マインドフルネス瞑想それ自体が痛み等の長期的症状を明らかに改善するとは感じていません。強烈な痛みの時はやはり、温熱療法やエプソムソルト、マッサージ等の他の方法が私には効果があります。それでも、一つの補完的療法として有用であると思っています。自分の意志とは関係なく痛みはやってきます。しかも、その痛みは尋常なものではありません。それでも、ほんの数分できそうな時があれば、マインドフルネスな状態に我が身を置き、痛みに心が支配されないよう心身を解放してあげる時間を作ってみてはどうでしょうか。
【参考文献】
「瞑想やマインドフルネスとは?」:厚生労働省eJIM | 瞑想[各種施術・療法 – 医療者] (ncgg.go.jp))
1) Grossman, P., Tiefenthaler-Gilmer, U., Raysz, A., & Kesper, U. (2007). Mindfulness training as an intervention for fibromyalgia: evidence of postintervention and 3-year follow-up benefits in well-being. Psychotherapy and psychosomatics, 76(4), 226-233.
2) Schmidt, S., Grossman, P., Schwarzer, B., Jena, S., Naumann, J., & Walach, H. (2011). Treating fibromyalgia with mindfulness-based stress reduction: results from a 3-armed randomized controlled trial. PAIN®, 152(2), 361-369.
3) Sephton, S. E., Salmon, P., Weissbecker, I., Ulmer, C., Floyd, A., Hoover, K., & Studts, J. L. (2007). Mindfulness meditation alleviates depressive symptoms in women with fibromyalgia: results of a randomized clinical trial. Arthritis Care & Research: Official Journal of the American College of Rheumatology, 57(1), 77-85.
4) Weissbecker, I., Salmon, P., Studts, J. L., Floyd, A. R., Dedert, E. A., & Sephton, S. E. (2002). Mindfulness-based stress reduction and sense of coherence among women with fibromyalgia. Journal of Clinical Psychology in Medical Settings, 9, 297-307.
5) 厚生労働省eJIM 線維筋痛症厚生労働省eJIM | 線維筋痛症[各種疾患 – 医療者]
6) Lauche, R., Cramer, H., Dobos, G., Langhorst, J., & Schmidt, S. (2013). A systematic review and meta-analysis of mindfulness-based stress reduction for the fibromyalgia syndrome. Journal of psychosomatic research, 75(6), 500-510.
7) Haugmark, T., Hagen, K. B., Smedslund, G., & Zangi, H. A. (2019). Mindfulness-and acceptance-based interventions for patients with fibromyalgia–A systematic review and meta-analyses. PloS one, 14(9), e0221897.