線維筋痛症と呼吸法に関する研究がありますが(詳しくはこちら)、私自身も体に激痛が出始めた頃、僅かな期間ですが医師の勧めで深呼吸をやっていた時期があります。3~4秒ほどかけて深く息を吸い、6~7秒ほどかけて息を吐くというものですが、これは残念ながら長続きしませんでした。その当時は、激痛で呼吸さえ上手くできず、深呼吸で息を吸い込ったり吐いたりすること自体結構な困難を伴いました。深く呼吸をすることさえ痛みを強く感じるため、肩で息をするような感じになり、決して簡単ではありませんでした。結局、続けてみたものの、何か改善に繋がるような効果を感じられるわけではなく、むしろ当時の私は何故自分はこれをする必要があるのかと疑問すら感じていました。
この時の一番の問題は、私が呼吸法に関して全くの無知でただ漫然とやっていたことだと思います。そういう意味では、患者の立場からすれば、医師が症状改善のための何らかの方法を提案する場合には、やはりそれを行う意味について伝える必要があると思います。何も知らずただ突然何かをやっても、訳がわからず漫然とやるだけという可能性も無きにしも非です。特に慢性病の場合、日々の症状を自己管理するためにも「知る」ことは重要でしょう。呼吸法の効果については、以下のようにいくつかのことが挙げられています。
◆ 呼吸法は、交感神経系(戦闘または逃走反応)を刺激し、痛みを感じやすくするストレス反応から抜け出すのに役立つ¹。
◆ 呼吸法は、痛みだけでなく、痛みによる筋肉の緊張や不安、恐怖、欲求不満などの他の要因も軽減するのに役立つ²。
◆ 呼吸法は、鼻からゆっくりと深く息を吸い、お腹を膨らませて数秒間息を止め、口からゆっくりと息を吐きながらお腹をへこませることで行う²。
◆ 呼吸法にはいくつかの種類があるが、例えば4-7-8 breathing(4-7-8呼吸法)やBox, square,or foursquare breathing(ボックスブリージング)、Equal breathingなどが慢性痛に有効である²。(下記動画参考)
Source:
(1) How to Use Breathing Techniques to Control Chronic Pain. https://www.thehealthy.com/pain/breathing-techniques-chronic-pain/ Accessed 4/18/2023.
(2) Deep Breathing Techniques to Help Manage Chronic Pain. https://www.painscale.com/article/deep-breathing-techniques-to-help-manage-chronic-pain Accessed 4/18/2023.
(3) 5 Breathing Exercises for COPD – Healthline. https://www.healthline.com/health/copd/breathing-exercises Accessed 4/18/2023
こうした僅かな知識でも、それが症状の改善効果についての理解があれば、痛みの中にあっても少し挑戦してみようという気にはならないでしょうか。幸いなことに、私の場合、当時は呼吸法について無知ではあったものの、激痛が始まった当初から簡単なヨガを取り入れていました。ヨガをやる際には自ずとゆっくり深い呼吸をしようとしますので、それで少し助けられていた面もあるのかもしれません。一般的なことは分かりませんが、当時の私は激痛の中にあっても、ただ座って深呼吸をするより少し体を動かしながら呼吸をしてみるほうが少し楽なように感じていたのを覚えています。ですので、結局は完全に深呼吸ないしは呼吸法を断念したというより、ヨガを通して適切でなくとも呼吸法のようなものをして助けられていたと言えるのかもしれません。しかしながら、その後、痛みだけでなくこわばりも激しくなっていった時期からは、常に息が詰まったような感じで日常生活全般がより一層困難なものに感じるようになっていきました。そして、知らず知らずのうちに、痛みやこわばりを我慢するかのように息を止めて何かをするというのが日常になっていました。その当時は全くそのことに自覚はありませんでしたが、随分改善が進んでいった頃に自分にそういう癖があることに気づきました。その頃はすでに発症から何年もが過ぎ、深呼吸のことなどすっかり忘れていたのですが、とりあえずその悪習を変えようと瞑想を日課として取り入れてみることにしました。
残念ながら、この瞑想もなかなか上手くいきませんでした。瞑想を始めた頃は現在と比べるとまだまだ様々な症状との格闘もあって、瞑想中でさえ普通に呼吸が上手くできず、肩で息をするような感じでした。別記事に書いていますが、瞑想それ自体は相応の効果を感じましたが、やはり呼吸の仕方が非常に良くないと思い、呼吸に関する動画を探しました。
そんなある日見つけたのが下記の動画の呼吸法です(自動翻訳付)。まずは、ここから呼吸法について知識と理解を得た上で、ガイダンスに従ってこれを毎日繰り返し続けました。そのうちに、肩を使って息をする感じが徐々になくなり、それと同時に症状にも改善がみられるようになりました。発症からの年数を考えると、随分遅すぎる理解でしたが、結果これもまた私にとっては大きな発見であり、症状改善の大きな前進にも一役買ってくれた方法です。何よりも呼吸だけですので、いつでもどこでも場所要らずで、ほんの僅かな時間でもできるという点も良かったと思います。
これによると、呼吸法(breathing exercise)による疼痛管理(pain management)の結果は非常に肯定的なものであることが多くの文献で示されているとのことです(詳細はこちら)。実際にやった私自身も結果は良好でした。これ以前の私の呼吸法は鼻から息を吸って口から吐くというもので異なっているのですが、私の場合、この動画における呼吸法の後には体が温まり、どことなく体全身が内側から落ち着いたような感覚になって体が鎮静する感じがあります。以前の方法も類似の感覚はあったのですが、私の場合は鼻から息を吸って鼻から吐くというほうがより心地よく感じられます。上述のように、呼吸法は様々にありますが、私は吐く呼吸がゆったり長いほうが自分には合っているようです。ただ、これは既に日常的な激しい痛みからは解放された時期に始めた呼吸法ですので、以前のような激痛のある状態での効果の程は分かりませんが、今でも症状管理の方法の一つとしてよく使っています。
今でも思うことは、慢性通と呼吸法ということについて激痛の症状が出始めた最初の段階で知ることができていればということです。効果の程は個人差がありますから当時の私にどう効いたのかはわかりませんが、やはり自身の症状と改善方法の関係や効果について「知る」ことは、患者がその病と日々付き合っていく上では大変重要なことだと思います。どんな方法であれ、それを行う意味や意義を理解しておくことは、その改善方法に対して目的意識を持ってやれるだけでなく、それを続けていく原動力にもなるのではないでしょうか。